対応疾患
乳歯が永久歯との交換期を過ぎても、なお残存している状態のことです。 乳歯が晩期残存すると、後続永久歯の正しい位置への萌出を妨げて、不正咬合の原因となります。 また、汚れが付着しやすいので歯周病の原因にもなります。
小型犬で多く認められます。 切歯、犬歯、臼歯のいずれにもみられます。
なお、 乳犬歯の残存は、永久犬歯の不正咬合を起こしやすくします。乳犬歯の晩期残存の発症率は約7%と報告されていま す。
唾液腺やその導管が傷害され、唾液が漏出して周囲組織に貯留したものを唾液瘤といいます。一方、唾石や炎症により、唾液腺管の狭窄や閉塞で唾液が貯留したものを唾液粘液嚢胞といいます。動物では、ほとんどが唾液瘤であり、さらに唾液粘液嚢胞の唾液腺管が破れると唾液瘤と区別がつかなくなるため、病理組織学的には、ほとんどが唾液瘤と診断されます。唾液瘤は発症部位によって以下のように分類されます。
●頸部唾液瘤
頸部腹側あるいは下顎間
●舌下部唾液瘤(別称:ガマ腫)
口腔内舌下組織
●咽頭部唾液瘤
咽頭壁の粘膜下組織
●頬部唾液瘤
眼窩周囲
原因は不明な点が多く、鈍的外傷や異物、唾石などがまれに確認されます。
歯の表面に付着した歯垢中の細菌が原因となって、歯周組織 (歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)が炎症を起こす疾患です。
炎症は最初、歯肉だけに及びます(歯肉炎)。そしてこれを放置すると、 炎症はほかの歯周組織にも及びます (歯周炎)。歯肉炎と歯周炎を総称して歯周病といいます。
上顎歯槽骨の破壊によって、口腔と鼻腔が貫通した状態のことです。 ほとんどが、鼻腔と隣り合う歯根を有する上顎歯 (切歯・犬歯・第 1 ~3 前臼歯・ 第4 前臼歯の近心口蓋根)の歯周炎による歯槽骨の吸収 (溶けること)が原因で発症します。特に上顎犬歯口蓋側の垂直性吸収によるものが多く認められます。
一方、上顎第4前臼歯の近心頬側根と遠 心根、上顎後臼歯の歯根は、眼があり鼻腔と隣接しないのでこれらの部位が原因となる歯周炎からの発症はほとんどありません。
このように歯根と鼻腔が隣り合う位置関係が、口腔鼻腔瘻の発症要因となります。ほかに外傷や不正咬合、抜歯時の医原性による発症もあります。
口腔内の悪性腫瘍は比較的多く認められる疾患で、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫が多く認められます。
いずれの腫瘍も局所浸潤性が強く、多くの場合、下顎骨や上顎骨に浸潤が認められます。悪性黒色腫は転移しやすい腫瘍ですが、扁平上皮癌と線維肉腫は比較的転移しにくい腫瘍です。
歯肉に発生した増殖性疾患の総称です。次の2つに大別できます。
● 炎症性(反応性):歯肉過形成(線維性エプーリス)
●腫瘍性:周辺性歯原性線維腫(線維腫性エプーリス、骨形成性エプーリス)、棘細胞性エナメル上皮腫 (かつては棘細胞性エプーリスと呼称)など
歯根膜から発症するとされています。発症に雌雄差 はなく、5 ~6歳齢以上での発生が多くなります。炎症性に発症する歯肉過形成(線維性エプーリス)が最も多くみられます。
※「エプーリス」という用語は次第に使用されなくなってきています。
歯髄炎が進行して歯髄壊死に至ると、様々な刺激物質が根管から根尖部周囲の歯周組織へ広がり、この病変が成立します。
病因の強さと組織抵抗力の強さとの関係によって、根尖周囲膿瘍、根尖周囲肉芽腫,根周囲嚢胞ー以上3 型のどれかになります(ただし、これらを臨床的に区別することは困難で、病理組織学的検査が必要です)。
典型的な原因は、歯冠破折がもたらす露髄 (歯髄が口腔内に露出した状態)です。
これにより、歯髄が直接的に細菌感染して発症します。
すべての歯で発症しますが、犬では上顎第4前臼歯歯冠の平板破折よるものが多く認められます。
対応検査
- 歯科X線検査
- CT検査