血液の疾患

対応疾患

リンパ腫

リンパ腫は血液の白血球の一 つであるリンパ球が腫瘍性に増える疾患であり、血液腫瘍の一つと定義されています。リンパ腫では、リンパ節、脾臓、胃腸管、肝臓などで腫瘍細胞が増殖し、しばしば腫瘤(しこり)が発生します。ただし、まれに明らかな 瘤形成がみられないこともあります。
病因としては 、犬種によっては多く発生する事例があり、一部の患者では遺伝子異常がみられています。
犬では全腫瘍のなかで3番目にみられています。犬では好発犬種として、ボクサー、バセット・ハウンド、ロット・ワイラー、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、 セント・バーナード、 スコティッシュ・テリア、エアデール・テリア、 ブルドッグ、 ゴールデン・レトリバー、 シェットランド・シープドッグが知られています。

急性リンパ芽球性白血病

急性リンパ球性白血病(ALL)は、リンパ系細胞の悪性腫瘍で、リンパ腫と本質的に同一系統の疾患であり、 骨髄が原発という点でリンパ腫と区別されます。犬のALLの発生機序は不明ですが多くは特発性です。近年、RAS、FLT3、C-KITなどの遺伝子異常が報告され関与が示唆されています。
犬でALLはかなりまれな疾患であり、発生率は不明です。

慢性リンパ球性白血病

慢性リンパ 性白血病 (CLL)は、骨髄において小型から中型の成熟した形態を持つリンパ球がクローン 性に増殖する疾患です。発生機序については不明ですが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI とCD25の発現が低いという特徴を示し、発生原因に関与していることが示唆されています。
CLL はかなりまれな疾患で発生率は不明です。犬では診断時の平均年齢が6 歳齢とされています。特定の品種で発生率が高い傾向があり、イングリッシュ・ブ ル ドッグ は B 細胞型のCLLの発生のリスク が高いことも報告されています。

急性骨髄性白血病

急性骨髄性白血病 (AML)は、犬では発生原因は不明です。
AMLはかなりまれな疾患で発生率は不明です。発生年齢は中年齢から高齢のことが多いです。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病(CML) は、成熟した白血球のなかの好中球が腫瘍性に増殖する疾患です。好中球は通常 、炎症、アレルギー疾患、腫瘍といった疾患で増えますが、CMLの場合はこのような疾患がみられずに持続的な好中球、好酸球、好塩基球のいずれかの著しい増加が認められる場合に本疾患が疑われます。原因はよく分かっていません。ヒトではフィラデルフィア染色体異常が認められますが、 犬でこのような遺伝子異常が存在するかどうかは明らかではありません。
CMLは非常にまれな疾患で発生率は不明です。

多発性骨髄腫

血液のがんの一種で、血液細胞のリンパ球の一種である形質細胞の腫瘍であり、この細胞から免疫グロブリンや破骨細胞刺激因子などが分泌されるタイプのことを指します。本腫瘍では、骨髄内で形質細胞が腫瘍化して、しばしば血液中の蛋白が異常に増加したり、骨が脆くなったりするほか、貧血や血小板減少、血栓症などが発生します。
犬の血液腫瘍の8%にみられ比較的発生はまれです。高齢犬 (8 ~10 歳齢)に多く認められ、性差はありません。好発犬種としてジャーマン・シェパード・ドッグが挙げられます。

免疫介在性溶血性貧血

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、免疫 介在性に赤血球が破壊されて、貧血を起こす疾患です。 原発性と二次性があります。原発性では、赤血球膜表面の抗原に対する抗体が産生されます。一方、二次性には、腫瘍や感染症などの基礎疾患、薬の投与、ワクチン接種などによって引き起こされるものが含まれ、血管のなかで赤血球が破壊されるタイプ(血管内溶血)と血管の外(脾臓や肝臓)で破壊される タイプ ( 血管外溶血)があり、血管内溶血のほうが発症は急で重症です。
コッカー・スパニエルに多いという報告があります。

再生不良性貧血

再生不良性貧血は、赤血球、白血球、および血小板がすべて減少する血液病です。造血の場である骨髄では、造血幹細胞が障害され、そのため 血細胞が著しく乏 しくなり「骨髄低形成」となっています。 その原因は、 特発性(免疫介在性)と続発性(ホルモン異常、感染症、薬物、毒物、放射線照射)とされています。
ホルモン異常は、 エストロジェン過剰によって発生し、セルトリ細胞腫、顆粒膜細胞腫やエストロジェンの過剰接種によ って発生します。感染症は、犬ではエールリヒアがしばしば関与します。薬物は、シクロホスファミドなどのアルキル化薬で高頻度に発生させます。
特発性の再生不良性貧血はまれな疾患であり、発生頻度は不明です。

免疫介在性血小板減少症

免疫介在性血小板減少症(IMT)は、血小板表面に免疫グロブリンが結合し、それを介して血小板が急速に壊される疾患です。
IMTには自己免疫疾患の原発性IMT と、基礎疾患(腫瘍、感染症、そのほかの自己免疫疾患など)に併発する続発性IMTとがあります。
雌雄別、犬種、年齢を問わずみられますが、雌の発症率のほうが高く、また特定犬種に多発する傾向があります。米国ではコッカー・スパニエルやプードルなどが、またわが国では、これらに加えて マルチーズの発症が多いようです。

バベシア症

病原体はBabesia gibsoni (約1✕2.5μm、類円形・ 点状など)とBabesia canis (約2~5μm)という原虫で、通常みられるのはBabesia gibsoni です。 原虫とは、インフルエンザなどのウイルスや大腸菌などの細菌のように、動物に感染する病原体の種類の一つで、バベシア以外にはアメーバやトリコモナス、 あるいは、蚊が媒介して貧血を起こすマラリアが含まれます。
バベシア感染犬を吸血したフタトゲチマダニなどが、未感染の犬を吸血すると感染しますが、幼ダニ、若ダ二、成ダニの いずれの時期でも、バベシア原虫を媒介します。わが国における発症地域は主に近畿以西ですが、関東や東北での発症もあります。

高脂血症

高脂血症には大きく分けて原発性、続発性の2 つのパターンがあります。
原発性とは遺伝性とも呼ぶことができ、あらゆる品種で発生しますが、いくつかの品種で好発することがわかっています。もっとも多いのは ミニチュア・シュナウザーで、この犬種のおよそ30 ~60%程度が高脂血症を発症します。そのほかにも、シェットランド・シープドッグ や ビーグル、トイ・プードルで 多 く 発 生 しています。
続発性とは、別の病気や薬剤の影響を受けて生じることです。原因となる病気は副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病、慢性腎臓病、肝疾患、膵炎,肥満などがあげられます。薬剤でもっとも多い原因はステロイド薬です。そのほかには、フェノバルビタール(抗てんかん薬)、臭化カリウム(抗てんかん薬)などの投与でも起こるとされています。
高脂血症そのものには決まった症状はなく、無症状のことが多いですが、腹部痛、元気消失、 嘔吐、 下痢などを起こすことがあると考えられています。
それよりも問題となるのが、高脂血症による合併症です。犬・猫では コレステロールよりも中性脂肪のほうが問題となることが多く、高脂血症が膵炎や肝障害(空胞性肝障害,胆嚢粘液腫),インスリン抵抗性による糖尿病、眼疾患(脂肪性角膜症、網膜脂血症)、アテローム性動脈硬化症などの原因になると考えられています。

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