対応疾患
片側もしくは両側の尿管が、膀胱において膀胱三角以外の場所に開口する (つながっている)先天性疾患です。
尿管が膀胱三角より遠位に開口すると、尿失禁が認められます。異常な尿管の開口場所は主に尿道です。 雌の場合は膣や子宮に開口することもあります。
壁内型(尿管が膀胱壁粘膜下を通過する)と壁外型(膀胱を完全に迂回する)に大きく分類されます。
雄よりも雌での発症が多くみられます。 犬種では、シベリアン・ハスキー、レトリーバー種、ニューファンドランド、トイ・プードル、一部のテリア種などで発症率が高いとされています。
何らかの腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で、最終的には末期腎不全へと移行する病態です。
先天性腎疾患、慢性腎炎、感染症、結石、腫瘍などが原因となりますが、はっきりとした原因が分からない場合もあります。腎臓以外の泌尿器の病気 (尿管結石や膀胱腫瘍、尿道閉塞など)が、原因となることもあります。
加齢に伴って腎機能は低下するため、高齢になるほど慢性腎臓病(CKD) のリスクが高くなります。 先天性腎臓病、もしくは、若齢時に何らかの腎障害があった症例は、比較的若い時期からCKDの経過をたどりま す。
尿路結石が形成される原因や機序には、未だ不明な点もありますが、家族性、先天性、さらに後天性の様々な要因が関与しています。
その要因として以下が挙げられます。
犬種や性別、年齢、尿路の解剖学的・機能的異常、尿pH.、尿中ミネラルの過飽和、食事内容や生活習慣、多くの基礎疾患(先天性代謝異常、肝臓病、腎臓病、尿路感染症など)の存在も要因となります。
好発犬種としては、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、ビション・フリーゼ、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。
犬の尿路結石成分で最も多いものは、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)とシュウ酸カルシウムの2つです。
主に膀胱内に侵入した細菌が原因となって、引き起こされます。
膀胱炎が再発・慢性化する基礎疾患としては、以下などが挙げられます。尿路に尿が停滞する疾患(神経機能不全による排尿困難、前立腺疾患など)、持続的な感染源の存在 (外陰部や生殖器の感染)、解剖学的異常(異所性尿管など)、異物(尿路結石、下部尿路腫瘍など)、 免疫機能低下(副腎皮質機能亢進症、ステロイドや免疫抑制薬の投与、慢性腎臓病、糖尿病など)。
性成熟の時期に達しても、左右あるいは片側の精巣が陰嚢内になく、精巣が腹腔内または陰嚢手前の皮下に停留している場合を潜在精巣といい、遺伝性疾患です。
雄犬における潜在精巣の発症率は 1. 7%前後と、ほかの動物種より高く、ポメラニアン、トイ・プードル、 ヨークシャー・テリアなどの純血種で発症が多いです。
子宮内膜の嚢胞性増殖を伴い細菌感染による炎症から子宮腔内に膿汁が貯留した疾患です。黄体期にみられるため、プロゲステロンが発症に深く関与しています。
子宮頸管の開放の有無によって、開放性と閉鎖性に分けられますが多くは開放性です。閉鎖性の場合は、外陰部からの排膿が認められず病態の進行が早いことから、敗血症性ショックによる死亡率が高い傾向があります。この場合の原因菌としては、糞便由来の大腸菌・プロテウス菌などのグラム陰性菌が多い傾向にあります。
一般的には高齢で多発しますが、若齢でもみられることがあります。経産犬よりも未経産犬で発症率が高いことが知られています。特別な好発犬種はなく、どの犬種でもみられます。同じ子宮角が膨瘤する子宮の粘液分泌過剰による子宮粘液症、または子宮水症では細菌感染はほとんど認められません。
亀頭先端の外尿道口からの細菌の上行性感染によって前立腺炎が起こり、その炎症が悪化して化膿性となり、膿液が前立腺の内部、特に嚢胞の腔に貯留した疾患を前立腺膿瘍といいます。膀胱炎を伴うことが多いです。
前立腺の炎症は,雄犬であれば年齢を問わす発症する可能性があります。ただし前立腺膿瘍は、加齢に伴う前立腺肥大に関連して起こることが比較的多いです。
犬の悪性腫瘍のうち、膀胱腫瘍は約2% を占めます。
膀胱腫瘍のなかで発生率が最も高いものは尿路上皮癌 (約90%以上)です。
尿路上皮癌の原因は不明ですが、ある種の薬剤 (古い世代のノミ駆除薬(粉末、スプレーなど)、 除草剤および駆虫剤、シ クロフォスファミド )の曝露および投与との関連性が報告されています。
発症率は、雌は雄の約1.7 ~2倍です。以下の特定犬種において、発症率が高いことが報告されています。 スコティッシュ・テリア(雑種犬に対するオッズ比18. 09)、シェットランド・シープドッグ (同 4.46)、ビーグル(同4.15)など。
卵巣に発生する腫瘍として、腺腫や腺癌顆粒膜細胞腫、未分化胚細胞腫および奇形腫などがあります。そのなかで最も多いのは、顆粒膜細胞腫(雌犬の卵巣腫瘍の約50%)、 次に多いのは腺腫および腺癌(約40~50%)でそのほかの卵巣腫瘍の発生はまれです。
卵巣腫瘍の多くは、中~高齢で発生しますが、若齢で発症する腫瘍(例えば奇形腫)もあります。不妊手術を行っていない雌犬における卵巣腫瘍の発症率は6%前後です。
腟における腫瘍発生はまれですが、主に未避妊犬において、良性の平滑筋腫や線維腫の発生が認められます。ほかに平滑筋肉腫、可移植性性器腫瘍(TVT)、扁平上皮癌などの悪性腫瘍も発生します。
腟の腫瘍では良性の平滑筋腫が全体の86%を占め、平均発症年齢は約10歳齢と高齢で発症します。平滑筋腫は避妊手術を受けていない犬に発症が認められるため、性ホルモン依存性であることが知られています。
前立腺肥大と前立腺腫瘍は、雄犬の唯一の副生殖腺である前立腺が、腹腔内で著しく腫大する疾患です。前立腺肥大は、精巣から分泌される性ホルモンの作用で起こります。一方、前立腺腫瘍は、精巣が摘出されていても発生する可能性があり、悪性の腺癌が大半を占めます。
前立腺肥大と前立腺腫瘍は、 7歳齢以上の高齢犬で生じます。
対応検査
- 血液検査
- エコー検査
- X線検査
- 尿検査
- 膀胱鏡検査