骨・関節・筋肉の疾患

対応疾患

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼は先天性、発育性、そして外傷性に発症します。最も一般的な要因は発育性であり、しばしば筋骨格系の異常と関連しています。膝蓋骨脱日は、脱臼方向に基づいて、「内方脱臼 (MPL)」 、「外方脱臼(LPL)」、そして「両方向性脱臼(BPL)」に分類されます。小型犬での罹患率が多いことから、遺伝的素因の存在や先天性、発育期における問題が疑われていますが、未だ議論が続いています。
ある海外のペットショップで行われた調査では、全体の7.2%で膝蓋骨脱臼が確認されました。なかでも 小型犬およびトイ犬種での罹患率が高く、トイおよびミニチュア犬種は大型犬と比較しておよそ12 倍の罹患リスクを有するとされています。

前十字靭帯断裂

本疾患の発症機序については不明な部分が多いですが、次のような様々な要因が関与すると考えられます。 靱帯の進行性変性、加齢、肥満、内分泌異常、炎症性関節疾患、腫瘍性疾患など。急性断裂は、主に若齢動物において外傷に伴って発生し、靭帯終止部の剥離骨折を伴うこともあります。
大~超大型の犬種で好発するとされますが、小~中型の犬種と猫でも発症が認められます。急性断裂は4 歳齢未満、慢性断裂は5 ~7歳齢での発症が多いことが報告されています。

肩関節脱臼

肩関節脱臼および亜脱臼は、小〜大型犬で認められる疾患です。トイ〜小型犬種では先天性に軟部組織が弛緩しており、病態の進行に伴い亜脱臼へと進行した時に臨床症状を呈することが多いです。外傷性の肩関節脱臼は、肩関節の弛緩した状態に外傷が加わり脱臼することが多いです。一般的には片側性であり、その多くは内方脱臼 (75~80%)を呈します。
肩関節脱臼は犬では比較的めずらしい疾患です。トイ犬種での発生頻度が最も高く、好発犬種としてはトイ・プードル、 ポメラニアン、シェットランド・シープドッグ、コリー、ダックスフンド、パグ、ペキニーズなどが知られています。

股関節形成不全

若齢期における股関節の成長の不均衡が原因となって、徐々に種々の程度の関節のゆるみを生ずる、股関節の亜脱日を特徴とする慢性疾患です。外傷性股関節脱臼が、落下や衝突などの要因により股関節の可動域を超える大きな外力が作用して、急性に発症するのとは大きく異なります。
股関節形成不全の発症はほとんどの犬種で確認されています。なかでも、セント ・バーナード、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキーなどの大型犬種において発症率が高く、かつ重篤なケースが多くみられます。

レッグペルテス病(大腿骨頭虛血壞死)

大腿骨頭部への血液供給障害のため、大腿骨頭部の細胞が虚血壊死を起こし、その結果、骨強度が低下します。骨梁の減少、破壊 (微小骨折)へと進み、体重負荷に耐えられなくなると骨頭全体が虚脱、変形し、疼痛と跛行の原因となります。この部分に虚血が起きる原因は分かっておらず、予防法もありません。
小型犬、特にトイ犬種の成長期に発生します。大型犬、成犬での発生はありません。約15% で両側同時の発生が起きます。性差はありません。

骨盤骨折

腸骨・坐骨・恥骨で構成される骨盤に、骨折が生じた状態です。骨盤は箱型の構造体であるため、1カ所に骨折が生じている場合には、他の2カ所にも骨折がある場合があります。交通事故などの外傷によって発生することが多く、その他の臓器や神経などにダメージが認められこともあるため、注意が必要です。後肢から脊柱に負荷を伝達する部位では、積極的な外科治療が必要となります。

橈尺骨骨折

前足の手首〜肘を構成する橈骨・尺骨の骨折です。多く見られるのが、骨の中央、そして骨の中央より遠い部分(手首側)での骨折です。骨折によって体重が負重できない為、患肢が地面につかない状態となります。骨折によって不安定になるため、周囲の神経・血管が傷ついてしまい、痛みや炎症が生じます。

関節リウマチ

免疫介在性関節炎のうち、erosive (びらん性)と分類されるものです。発症原因は不明です。疾患の本態は滑膜の炎症で、滑膜細胞の増生、関節液の増加、関節液内での炎症細胞の増加を引き起こします。病態が進むと炎症性肉芽組織 (パンヌス)が増生し、関節軟骨が破壊され、ついで軟骨下骨まで破壊が進行します。
小型犬、中型犬の若年~中年齢以降で好発します。大型犬の発生はほとんどありません。

変形性関節症・骨関節症

関節軟骨の変性、菲薄化、消失に伴って起きる疼痛と、二次的な骨や関節構造の変化(骨棘形成、軟骨下骨硬化、滑膜炎など)の総称です。“軟骨がすり減る” と表現されますが、物理的な磨耗ではなく軟骨代謝の異常とそれに続く軟骨変性が主体です。疾患・異常のある負重関節では、合併症として必ず発生します(二次性)。特に疾患のない正常な関節でも、加齢に伴い高率に発生します(一次性)。
 変形性関節症は非常に広く認めら、成犬の20%でX線所見が認められるという報告があります。中高年齢で発症し、ゆっくり進行するのが一般的です。

離断性骨軟骨炎

骨軟骨症とは、成長期の動物に認められる骨端部(関節面)を形成する成長軟骨における、軟骨内骨化過程の障害に起因した疾患です。また離断性骨軟骨炎(OCD )とは 、軟骨層と骨端に生じた隙間が関節表面に達し、関節軟骨が弁状に剥離した状態を意味し、疼痛や二次性骨関節炎を引き起こします。病因・病態は未だ不明な点があるものの、虚血壊死した軟骨細胞領域に亀裂が生じることにより発生すると考えられてい ます。
大~ 超大型犬の雄で好発し、両側での罹患率は27~68% と報告されています。高カルシウム、高カロリー、高蛋白食の給与は本疾患発症と関連する可能性があります。好発犬種として、グレート・デーン、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ニューファンドランド、ロットワイラー、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグが挙げられます。

椎間板ヘルニア

● 胸部椎間板ヘルニア(TL-IVDH)
「遺伝学的要因」や「加齢により変性した椎間板髄核の脊柱管内への逸脱」や「線維輪のおよび神経根の圧迫」を特徴とします。
●頸部椎間板ヘルニア(C-IVDH)
「遺伝学的要因」や「加齢により変性した椎間板髄核TL- IVDHと同様に遺伝学的要因が関連しており、「変性した椎間板物質の脊柱管への逸脱」や「線維輪の膨隆による脊髄神経性した椎間板物質の脊柱管内への逸脱」や「線維輪のおよび神経根の圧迫」を特徴とします。
膨隆による脊髄神経および神経根の圧迫」を特徴とします。

変形性脊椎症

椎間板周囲に発生する二次的な骨増殖のため、隣接する椎体間を架橋するような骨格変形が進行していく疾患です。椎間板変性に起因する椎体間の不安定性が、骨増殖を誘発すると考えられていますが、詳細は十分に解明されていません。
一般的には、小~大型の高齢犬に多くみられますが、若齢犬でも認められます。 好発部位は頸椎、胸腰椎移行部、腰椎、腰仙椎領域ですが、胸椎領域にも認められることがあります。

骨肉腫

骨肉腫は、体高の高い大型犬に多く発生します。体重の負荷が骨の微小骨折を誘発し、それが骨芽細胞の変異を起こすためと考えられています。また、放射線治療後に二次的に発症することもあります。さらに、骨折の癒合不全、固定用金属インプラントによる慢性炎症が、その原因とも考えられています。
骨肉腫は骨原発腫瘍の約85%を占めます。そして、骨肉腫全体の約75%は四肢に発症します。四肢骨肉腫の発症部位は、主に骨幹端部です。発症割合は「前肢:後肢=約2: 1」で、「肘から遠く、膝に近い」部位に好発する傾向があります。四肢骨肉腫の約90%は、発見時にはすでに遠隔転移を起こしていると考えられています。

特発性多発性関節炎

免疫介在性関節炎のうち、nonerosive (非びらん性)と分類されるものの一つで、発症原因は不明です。滑膜に炎症が起き、関節の疼痛や跛行が起きます。関節軟骨と軟骨下骨には異常は起きません。 全身性の免疫異常であり、関節以外の症状も出ることに留意します。
小型犬の中年齢以降に好発しますが、大型犬や若年にも発生はありえます。好発犬種としてダックスフンドが報告されています。

特発性多発性筋炎

全身の筋肉に炎症が起こる病気です。本来は自分の身体を守る免疫が、何らかの理由で狂ってしまうことで発症します。年齢、犬種に関係なく発症しますが、大型犬や高齢の犬で多い傾向があります。筋肉の萎縮などの臨床症状、血液検査、筋電図、筋生検により診断します。

内側鉤状突起分離

発生要因としては、「橈骨と尺骨の成長不均衡 (橈骨 <尺骨)」、 上腕二頭筋などの筋肉の張力不均衡に起因した「内側鉤状突起ならびに橈骨頭にかかる剪断力」などが一因として考えられていますが、明らかではありません。
若齢の大~超大型犬で好発します。好発犬種として、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード・ ドッグ、ロットワイラーが知られています。雄は雌の約2 倍の罹患率を有します。

肘突起癒合不全

橈骨と尺骨の成長不均衡(橈骨>尺骨)が関連していると考えられます。 橈骨が尺骨と比較して長くなると、上腕骨の滑車上孔にはまり込んでいる肘突起が上方へ圧迫されます。
好発犬種としては、ジャーマン・シェパード・ドッグが 特に知られています。 罹患犬の72%はジャーマン・シ ェ パ ー ド・ドッグ だったとする報告もあります。この犬種は、 生後20~22週齢まで肘突起が肘頭と分離しているため、この疾患への罹患リスクが高くなっています。

対応検査

  • 血液検査
  • X線検査
  • エコー検査
  • CT検査
  • 関節液検査
PageTop PageTop
0875-27-8912
WEB予約 LINE