対応疾患
犬における鼻炎 ・副鼻腔炎は、様々な原因により引き起こされます。具体的には、感染性鼻炎(細菌、ウイルス、アスペルギルス属などの真菌、寄生虫)。非感染 性炎 (リンパ球形質細胞性鼻炎 、アレル ギー性鼻炎など)。異物性鼻炎 、歯牙疾 患による鼻炎などが挙げられます。
リンパ球形質細胞性鼻炎などの非感染性鼻炎は、わが国では中年齢のミニチュア・ダックスフンドにおいて好発です.
明確な原因は不明です。しかし、” 地方よりも都市部 で暮らす犬で発生率が高い" との研究結果もあることから、様々な環境汚染物質が関与している可能性があります。
コリー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード・ドッグ、 シェットランド・シープドッグ など鼻の長い犬種において、高齢期に好発します。
局所的な軟骨形成不全のため、 鼻から気道に至るまでの部位に、解剖学的および形態学的異常が発生した病態です。
外鼻孔狹窄、軟口蓋過長、咽頭虚脱、扁桃腫大、声門裂狭窄,喉頭小嚢外転、喉頭虚脱 、気管低形成、気管虚脱などが単一あるいは複数で認められます。
チワワ、キャバリア・キング・チャール ズ・スパニエル、ブルドッグ、パグ、ポメラニアンおよびヨークシャー・テリアなどの短頭種で認められます。
喉頭麻痺の病因は、慢性進行性多発性ニ ューロパチーが最も多く、ほかの病因としては、先天性、多発性筋炎、重症筋無力症や腫瘍、医原性、外傷などによる喉頭反回神経障害があります.
左右の披裂軟骨が不動化となり、吸気時においても 外転(開大)しない病態が喉頭麻痺です。
そして、 声門裂の狭窄に伴う慢性的な吸気努力が続くと、吸気時に左右の披裂軟 骨が内転する喉頭虚脱となるのではないかと考えられています。
先天性と後天性があり、先天性は遺伝性 疾患として、 ブービエ・デ・フランダース、 ダルメシアン、 ロットワイラー、シベリアン・ハスキーなどが1歳齢未満で発症しています。 後天性の多くは、高齢の大型犬、特にラブラドール・レトリーバーで好発しています。
正確な原因は未だ不明ですが、気管軟骨 や軟骨基質の変性や遺伝的素因が原因の一端と考えられています。
その結果として、気管軟骨の脆弱化と膜性壁の伸展・下垂が起こり、円筒形の気管が扁平化します。
ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、 チワワなどのトイ種が好発犬種ですが、 日本犬や大型犬など様々な犬種に発症します。好発年齢は6 ~9歳齢ですが、発症は1~15.16歳齢と広範囲にわたり、特に遺伝的素因を有する犬種では、1~3歳齢に おける発症もまれではありません。
気胸においては、空気やガスが胸膜腔内に入り込み、大気圧よりも低い胸腔内圧を維持できなくなるため、肺の拡張が困難となります。
原因によって、外傷性、自然発生性、医原性、感染性に大別されます。
脂肪や遊離脂肪酸が乳化して、リンパ管に取り込まれた乳びが、胸膜腔内に貯留した病態です。
以前は、外傷性に起因する二次的胸管損傷が原因と考えられていましたが、現在はそのほとんどが特発性とされています。
静脈圧が上昇するすべての疾患が、乳び胸の原因となります。具体的には、心筋症、心膜疾患、先天性心奇形などが挙げられますが、乳び胸のほとんどは原因が不明です。
好発犬種として、中年齢のアフガン・ハウンド、若齢の柴が挙げられます。
感染性の炎症のため、膿性滲出液が胸膜腔内に貯留する病態です。
原因は気道、食道および胸壁を介しての感染ですが、多くの場合、正確な感染経路は不明です。
原因菌として、以下が多く分離されますー 嫌気性菌< フソバクテリウム属 ( F u s obacterium)など >、ノカルディア属のノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、パスツレラ属のパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)など。
狩猟犬や活動犬に多くみられるものは、ノギなどの種子の迷入です。原因不明の場合 、通常は特異性を見出すことができません。
感染性肺炎 (ウイルス性、細菌性,真菌性)、吸引性 (誤嚥性)肺炎、間質性肺疾患 などが存在します。 二次性の細菌感染 を併発していることも多いです。
犬の慢性気管支炎は、過去1年間に、少なくとも2 カ月間連続する慢性的な咳を特徴とします。
多くの症例においてゆっくり進行し 、その原因は不明なことが多いです。何らかのアレルゲンなどの原因 物質により気道損傷が起こり、それに対する組織反応
が発生・継続することで、過剰な粘液が分泌されます。粘液物質が気管支を閉塞し、気管支壁は慢性炎症により破壊されます。
中年齢以上の小型犬 (トイ種やテリア種)に加えて、わが国ではミニチュア・ダックスフンドで多く認められますが、大型犬でも発症します。
肺胞内あるいは肺の間質における体液貯留のことです。原因によって心原性と非心原性に分けられます。
心原性は高い毛細血管静水圧に起因し、僧帽弁閉鎖不全症、心筋症、各種心奇形などあらゆる心疾患において発生します。
非心原性は上部気道閉塞性疾患、刺激性ガスの吸引. 感電などをはじめとし、低毛細血管膠質浸透圧、高毛 細血管・肺胞 上皮透過性、高い陰性胸腔内圧・間質圧
を惹起する疾患において発生します。
心原性は先天性および後天性心疾患、非心原性は多種にわたる原因によります。このため、あらゆる犬種の年齢で発症します。
原発性と転移性に大別されます。多くは孤立性腫瘤として発生します。転移性腫瘍は、血行あるいはリンパ行性に播種性なので、多発性で比較的広範囲に拡大します。
原発性腫瘍の発症率 は、犬で1 %ほどで、平均年齢は犬で11歳齢とされています。腺癌、扁平上皮癌が代表的で、多くが後葉に発生します。
これに対して転移性肺腫瘍では 各種の固形癌およびリンパ腫などの独立細胞癌など、ほとんどの種類の腫瘍がみられます。
先天性横隔膜ヘルニアでは、腹膜心膜ヘルニアが最も多くみられます。横隔膜の先天的欠損のため、または後天的で主に外傷のため、筋断裂をきたすことにより、腹腔臓器が胸腔内へ逸脱した状態をいいます。
先天性横隔膜ヘルニアは、腹膜心膜ヘルニア、胸膜腹膜へルニア、食道裂孔ヘルニアに分類されます。
対応検査
- 血液検査
- X線検査
- エコー検査
- CT検査
- 気管支鏡検査