対応疾患
雄性ホルモンに依存する病態ですが、ほかに、腹圧のかかる様々な状態 (咳、よく吠える、腹腔内の腫瘍、妊娠、前立腺肥大、便秘や下痢、排便困難、排尿困難) がかかわって起こります。
骨盤隔膜を構成する筋肉群 (肛門括約筋、肛門挙筋、尾骨筋)の萎縮によって、腹腔内臓器が会陰部に脱出します。
中~高齢の未去勢雄犬に発生しやすい一方、去勢雄や雌犬も罹患します。
好発犬種はミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー・ペンプローク、フレンチ・ブルドッグ、ヨー クシャー・テリア、 シェットランド・シープドッグ、パピヨン、シー・ズー、ペキニーズなどです。
犬の直腸に発生する腫瘍としては、ポリープ、腺癌、リンパ腫などが報告されています。良性、悪性の発生頻度は同等と されます。ポリープは直腸遠位に発生しやすく、およそ80%は単発、20%は多発 病巣を形成します。
わが国では、ミニチュア・ダックスフンドにおけるポリープがよく認められます。しかし、ミニチュア・ダッ ク ス フ ン ドでも、腺癌や他の腫瘍の発症もあることから、どのような症例であっても生検の実施は重要です。
肛門嚢は排便時に収縮する肛門括約筋に挟まれるように存在し、貯留した分泌物を排出する仕組みが備わっています。
肛門嚢炎は主に細菌感染(糞便由来)や肛 門嚢の導管閉塞の結果、起こります。肛門に炎症が起こると分泌物は排泄されず貯留して、違和感、自潰、肛門嚢の破裂ならびに管形成をもたらします。
肛門嚢炎は犬の10%ほどが 罹患するとされます。
あらゆる犬種・年齢に起こり、性差はありません。再発症例においては、片側もしくは両側の肛門嚢切除術を行います
肛門周囲腫瘍の多くは、肛門周囲腺腫と肛門嚢アポクリン腺癌です。
肛門周囲腺腫は良性で、去勢手術と腫瘍 切除によって、その多くは治癒します。
肛門アポクリン腺癌は悪性で、腰下リンパ節、肝臓。 脾 臓、肺、椎骨、骨などに転移します。
肛門周囲腺腫はアンドロゲン依存性のため未去勢雄に多く、雌犬での発症はまれ です。 尾根部、包皮、後肢体幹、肛門周囲に発生します。
肛門嚢アポクリン腺癌 は雌でも認められますが、 雌での発生はほとんどが腺癌です。