対応疾患
犬の肝臓腫瘤は、形態学的に塊状型 (孤立性大型腫瘤)、結節型、浸潤型 (びまん性)に分類できます。
孤立性大型腫瘤の発生が多く、その約70 %が肝細胞腫瘍 (肝細胞癌、肝細胞腺腫を併せて、 そうよびます) であり、次いで肝細胞の結節性過形成になります。その他には胆管癌、カルチノイド、 リンパ腫、組織球性肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、あるいは甲状腺癌や肛門腺癌の転移などが発生します。
発生は高齢の犬が多く、好発犬種や雌雄差は認められませんが、わが国ではシー ・ズーやミニチュア・シュナウザーで比較的多く認められます。
急性肝炎は一般的に、 感染または化学物質・薬品などによる中毒によって起こります。後者は急性中毒性肝炎ともいいます。
感染症の病原体としては、ワクチン未接種の犬では、犬伝染性肝炎ウイルスやレプトスピラという細菌が挙げられます。しかし、感染が病因となるのはかなり稀といえます。
家庭内にある様々な物質によって、中毒性肝炎が起こる危険性があります。飼育環境において、薬品や化学物質などを使用している場合は、特に注意が必要で
す。なお国内では、感染症による急性肝炎の発症は決して多くありませんが、 レプトスピラ症が多発している地域では注意が必要です。
胆泥症は、胆嚢内にムチンを主体とした泥状物が貯留する疾患です。胆石症は、胆嚢内にビリルビンカルシウムや炭酸カルシウムが主成分の結石が貯留する疾患です。
胆泥症は、高齢の犬では比較的高率に 認められるといわれています。胆石症は胆泥症と比較するとまれな疾患です。
胆嚢内に可動性のない粘液が集積し、拡張した状態を指します。重度に拡張すると胆嚢壁が虚血・壊死し、破裂することもあります。
胆泥や濃縮胆汁の刺激に よって、胆嚢壁の粘液産生細胞が粘液を過剰に産生することが原因の一つと考えられますが、粘液成分の変化などを含めて、正確な機序は分かっていません。
中~高齢 犬で多くみられ、好発犬種として以下が挙げられます。シェットランド・ シープドッグ、コッカー・スパニエル、ビーグル、シー・ ズー、ミニチュア・シュナウザーなど。
細菌・ウイルスの感染や薬物、また肝臓のなかに蓄積した物質によって、慢性的な肝炎が引き起こされると考えられています。しかし多くの場合、原因を特定できません。
犬の慢性肝炎は、発症しやすい犬種がいくつか知られています。 そのなかには、肝臓に銅が蓄積しやすいことが病因となっている犬種もあります。
様々な犬種で発症しますが、好発犬種とよばれるものが存在します。
ベドリントン・テリアでは遺伝病として、食事に含まれる銅が肝臓内に蓄積し、肝炎を引き起こすことが詳しく分かっています。
門脈体循環 シャントとは、門脈血の一部が、肝臓に流れずに後大静脈や奇静脈に流入する血管の異常で、先天性と後天性に分けられます。
【先天性】
肝外シャントと肝内シャントに分けられ、通常シャ ント血管は1本だけです。一般的に肝外シャントは小型犬に多く、肝内シャントは中・大型犬に多いといわれていますが、小型犬でも肝内シャントを発症することがあります。
【後天性】
肝硬変 ・慢性肝炎 ・原発性門脈低形成などの肝疾患に続発する門脈高血圧症によって引き起こされ、多発性のシャント自 管を形成します.
急性と慢性の病態があり組織学的に分類されます。慢性膵炎の急性期の症例が急性膵炎として来院する場合もあり、臨床的には重複します。膵臓内のトリプシノーゲンの早期活性化に伴う自己消化と重 度の炎症が病態の根本であり、膵臓 周囲の脂肪壊死と無菌性腹膜炎を生じます。
中年齢の犬に好発しますが、若齢や高齢の動物でも発生は認められます。 テリア種、ミニチュア・シュ ナウザーは急性膵炎を発症しやすく、遺伝的要因の関与が示唆されますが、すべての犬種に発生します。
犬の膵外分泌不全(EPII)は慢性膵炎の末期、あるいは、膵腺房細胞の委縮や破壊により消化酵素の分泌 能力を90%以 上失われることにより生じます。
ジャーマン・シェパード・ドッグにみられる遺伝性 と、あらゆる品種に生じる特発 性 (成 犬 型 ) に大別されます。
ジャーマン・シェパード・ドッグのほとんどは2歳齢までに発症しますが、そのほかの犬種でも5 歳齢までに多発します。
雌雄による発症頻度の差は認めませんが、壮齢以上 のイングリ ッシュ・コ ッカー・スパニエルの雄では、自己免疫性慢性膵炎に起因したEPI を認めることがあります。
対応検査
- 血液検査
- エコー検査
- X線検査
- 腹腔鏡検査
- CT検査