呼吸器の疾患

対応疾患

ウイルス性上気道感染症

猫ヘルペスウイルス- 1(FHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)による上部呼吸器疾患です。免疫のない子猫の場合、重篤で死に至ることも多くみられます。
なお、FCVは野外間で抗原性がかなり異なることから、何度も感染し、発病を繰り返すこともあります。
鼻汁などの飛沫によって経鼻感染します。
FHV-1は潜伏感染し、時に再活性化して感染源となります。FCV感染症は回復後も長期間ウイルスを排出する持続感染となり、感染源となります。FCVは、環境中で長期間感染性を保持しており、衣類や道具などに付着して感染することもあります。

鼻炎・副鼻腔炎

様々な原因により引き起こされ、具体的には、感染性鼻炎(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫)、非感染性炎 (アレル ギー性鼻炎など)、異物性鼻炎などが挙げられ、二次的な細菌感染を伴うことが多いです。
いずれの種類の鼻炎も、どの年齢においても発症する可能性はありますが、高齢になるにつれて発症する可能性は大きくなります。

鼻腔内腫瘍

病因はよく分かっていません。リンパ腫が最も多く、続いて腺癌や 扁平上皮癌な どの上皮腫瘍です。
好発年齢は10歳くらいですが、好発品種についての報告はありません。鼻腔内リンパ腫の多くは、猫白血病ウイルス(FeLV)陰性です。

気管虚脱

正確な原因は未だ不明ですが、気管軟骨 や軟骨基質の変性や遺伝的素因が原因の一端と考えられています。
その結果として、気管軟骨の脆弱化と膜性壁の伸展・下垂が起こり、円筒形の気管が扁平化します。
猫においては原発性の気管虚脱はきわめてまれですが、上部気道閉塞などにより二次的に発症します。

猫喘息•慢性気管支炎 (下気道炎症性疾患)

詳細な病態は未だ不明ですが、何らかの原因に対し炎症が生じ、それが慢性化することで、気道粘膜の浮腫・平滑筋の収縮・過敏症を伴い気道が閉塞します。
原因としては様々なアレルゲンだけでなく、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、寄生虫などの感染も、原因および増悪因子と考えられています。
初期の炎症時は可逆性ですが、慢性期には肺気腫などの不可逆性変化をもたらします。
若齢~中年齢の猫に多く認められます。シャム系の猫に好発するという報告もありますが、すべての品種において発症する可能性があります。
わが国においてはロシアンブルーなどの純血種にも好発であるとみられます。

気胸

気胸においては、空気やガスが胸膜腔内に入り込み、大気圧よりも低い胸腔内圧を維持できなくなるため、肺の拡張が困難となります。
原因によって、外傷性、自然発生性、医原性、感染性に大別されます。

乳び胸

脂肪や遊離脂肪酸が乳化して、リンパ管に取り込まれた乳びが、胸膜腔内に貯留した病態です。
以前は、外傷性に起因する二次的胸管損傷が原因と考えられていましたが、現在はそのほとんどが特発性とされています。
静脈圧が上昇するすべての疾患が、乳び胸の原因となります。具体的には、心筋症、心膜疾患、先天性心奇形などが挙げられますが、乳び胸のほとんどは原因が不明です。
シャムやヒマラヤン などに多いとされます。しかし、あらゆる品種で発症する可能性があります。

膿胸(化膿性胸膜炎)

感染性の炎症のため、膿性滲出液が胸膜腔内に貯留する病態です。
原因は気道、食道および胸壁を介しての感染ですが、多くの場合、正確な感染経路は不明です。
原因菌として、以下が多く分離されますー 嫌気性菌< フソバクテリウム属 ( F u s obacterium)など >、ノカルディア属のノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、パスツレラ属のパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)など。

肺炎

感染性肺炎 (ウイルス性、細菌性,真菌性)、吸引性 (誤嚥性)肺炎、間質性肺疾患 などが存在します。 二次性の細菌感染を併発していることも多いです。猫喘息などの下気道炎症性疾患が重篤化し、気管支肺炎まで進行する場合も多く存在します。

肺の腫瘍

原発性と転移性に大別されます。多くは孤立性腫瘤として発生します。転移性腫瘍は、血行あるいはリンパ行性に播種性なので、多発性で比較的広範囲に拡大します。
原発性腫瘍の発症率 は、猫で0.5%ほどで、平均年齢は13歳齢とされています。腺癌、扁平上皮癌が代表的で、多くが後葉に発生します。
これに対して転移性肺腫瘍では 各種の固形癌およびリンパ腫などの独立細胞癌など、ほとんどの種類の腫瘍がみられます。

横隔膜ヘルニア

先天性横隔膜ヘルニアでは、腹膜心膜ヘルニアが最も多くみられます。横隔膜の先天的欠損のため、または後天的で主に外傷のため、筋断裂をきたすことにより、腹腔臓器が胸腔内へ逸脱した状態をいいます。
先天性横隔膜ヘルニアは、腹膜心膜ヘルニア、胸膜腹膜へルニア、食道裂孔ヘルニアに分類されます。

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